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第118話 微笑む女

Author: marimo
last update publish date: 2026-09-13 20:04:37

 朝の光が、冷たいガラス窓を白く染めていた。

 長い夜が終わった。

 だが優には、時間が流れた感覚がなかった。

 ほとんど眠っていないはずなのに、不思議と頭は冴えている。

 張り詰めすぎた神経が、疲労すら遮断していた。

 ICUの前に立ち、優はガラス越しにひかるを見る。

 眠ったままのひかる。

 小さな胸が、規則正しく上下している。

 それだけでいい。

 生きている。

 それ以外は、何も望まない。

 何度そう自分に言い聞かせても、胸の奥にある恐怖は消えなかった。

 もし、あの呼吸が止まったら。

 もし、もう二度とその瞳を見ることができなかったら。

 考えただけで、心臓を素手で握り潰されるような痛みが走る。

 ――俺は、こんなにもひかるを愛していたのか。

 いや。

 違う。

 今、突然愛したわけではない。

 ずっと前からだった。

 五年前。

 優は、その気持ちを誰にも見せなかった。

 沙羅と結婚していた頃でさえ、自分の本当の感情をひた隠しにしてきた。

 仕事を優先した。

 感情を抑えた。

 そして、自分自身にさえ嘘をついた。

 沙羅との結婚が終わったときも、「仕方がなかった」と思い込も
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